緻密な戦略設計と多彩なクリエイティブで、“4割の壁”を突破
分析・調査で、顕在化していなかった機会点を抽出
新たなインターナルコミュニケーション戦略の策定にあたっては、マーケティングの手法を応用し、まず徹底した調査・分析を行いました。
はじめに既存媒体の分析を実施。特に『Webがす燈』は広報担当者が高い熱意をもって取り組んでおり、コンテンツの充実度も高い一方、経営課題との連動やコアターゲットの明確化、情報量の最適化、アクセス数向上に向けた施策など、改善の余地も見えてきました。インターフェースの観点でも、目的に即した設計により従業員の体験価値をさらに高められる可能性があると分かりました。
また、Daigasグループ従業員向けに行った広報部主催のアンケート調査では、企業理念に対する「理解」や「共感」について、「大阪ガス」「グループ会社」ともに促進の余地があると判明。クロス集計を通じて、重点的にアプローチすべきターゲット層も導くことができました。
さらに、従業員の率直な声を把握するため、Daigasグループ従業員約20名を対象にインタビューを実施。現状の情報発信や会社方針の理解、経営層との距離などについて伺うなかで、従業員が求めるインターナルコミュニケーションの実現に向けた重要な手がかりを得られました。
目的に即した多彩なクリエイティブ
インサイト獲得後はMECE(モレやダブりなく設計する考え方)に基づき緻密に施策の設計を行いました。各媒体からコンテンツ一つひとつに至るまで、お客様と細かなチューニングを何度も重ねています。
最初に着手したのは、グループ内広報の目的(KGI)の明確化です。「インターナルブランディングによる従業員エンゲージメントの向上」をKGIとして設定し、それを基盤に各インターナルコミュニケーション媒体の目的や対象を再構築しました。さらに、KGIと連動したKPIも策定しています。
KGIやKPIを踏まえた各媒体のリニューアルの中でも、インターナルコミュニケーションの中心的役割を担う『Webがす燈』は、『Webグループ報 がす燈』として、全面的な改修を行いました。目玉となるのは、サイトログイン時の認証方法を共通ID・パスワードから個別ID・パスワードへ変更した点です。主幹となるIT部門の方々へ意義の説明から丁寧に行い、細かな要件を整理。記事のお気に入り登録など、パーソナライズ機能を有したサイトを実現しました。
コンテンツも拡充しています。特に次世代リーダー層である30代をコアターゲットとし、Daigasグループの理念や戦略の「自分ごと」として捉えられるようなコンテンツやキャリア形成や仕事のやりがいをテーマとしたコンテンツを追加。また、「GASスタグラム」をはじめ従業員が気軽に参加できる企画も展開。会社や仲間について知り、感じ、つながることのできる、バラエティに富んだラインアップとなっています。

硬軟織り交ぜたコンテンツラインアップ
他にも、要望のあった一部のグループ会社に向けては、『Webグループ報 がす燈』の配下に「個社サイト」を設置し、運用を開始しました。「個社サイト」内に『Webグループ報 がす燈』の記事も表示することで、グループの一員として知っておくべき情報に自然に触れられる環境を整えています。
なお、中期経営計画に関しては、より深い理解を促すために、研修用の動画やスライド資料も産業編集センターで制作しました。
熱意あるご担当者とともに、コンテンツの制作工程にも伴走
緻密な設計も重要ですが、従業員エンゲージメントの向上に向けてより重要なのが“中身”――一つひとつのコンテンツやその運用、グループ各社やその従業員の方々の主体的な参加です。
熱意ある担当者の皆様による精力的なコンテンツ制作や閲覧促進に向けた誘引施策、グループ各社に向けた情宣活動など、サイト公開後も継続して幅広い取り組みを展開。産業編集センターとしても、パートナーとしてお客様に伴走し、密にサポートを行いました。
こうした地道な取り組みが奏功し、『Webグループ報 がす燈』へ月に1回以上アクセスする従業員の割合は2023年度から約10ポイント増加し、2024年度実績として45.5%に到達。月間アクセス数は約10万件にのぼります。『Webグループ報 がす燈』はDaigasグループに関連する情報や仲間が集うプラットフォームとしてはもちろん、従業員一人ひとりがありたい姿や未来を考えるきっかけにもなっており、従業員のエンゲージメント向上に大きく寄与しています。
また、戦略的な設計・運用が随所に発揮された『Webグループ報 がす燈』は、社外からも高い評価を受けています。その一例として、社内報関連のコンテストでは240社の中からWeb媒体部門で1位を獲得。他にも、日本経済新聞ではインターナルコミュニケーション戦略策定に込めた想いや取り組みが紹介され、大きな反響を呼びました。
個別認証を基盤にパーソナライズされたサイトとしたことで、アクセスログなどから得られる情報の精度も一層高まりました。これにより、データに基づいたより効果的な改善施策の立案・実行が可能となっています。
今後は、コンテンツマーケティングの手法を応用したデータドリブンなサイト運営によるさらなる閲覧数の増加が目標です。エンゲージメント調査と各媒体との関連性をより細かく解析し、適切なアプローチを行うことで、従業員エンゲージメントの向上に引き続き取り組んでいきます。